越前リョーマと誕生日







越前リョーマは朝からソワソワしていた。

部の先輩たちもそんな越前を珍しいと思っていた。

特に桃城は終始からかうが、それを越前は軽く交わしていた。

「なぁ、越前。お前今日何かあんの?」

「別に何も・・・」

詳しく言わない越前に桃城は部活の終わりに再び同じことを聞いていた。

越前にしてみれば、部活が始まってからずっと同じことを聞いているので

かなりウザく思っていた。

着替え終わり、越前はそのまま、逃げるように帰る。

「お疲れさまっス」

越前は桃城の問いに答えることもなく、その場から去っていった。

「何だよ、越前のやつ、付き合い悪いな〜」

桃城は絶対に何かあると確信していたが、それを聞けなかったことに悔しんだ。


部室を出たころ、いいタイミングでメールが届く。

跡部からだ。

「どうせ、今すぐ氷帝に来いとかでしょ?」

まさしくその通りで今から付き合えという内容だった。

跡部とは別にそれほど交流があるわけでもない。

跡部から必要以上に連絡があり、越前もそれに付き合うことはないのだが。

跡部は少し前に越前に告白したことがあり、彼はそれをザックリと断った。

それにもかかわらず、跡部は諦めきれないらしく未だに連絡をしてくる。

別に面倒だったがこの際、もう一度ザックリと諦めるようにいおうと越前は思っていた。


予定があったのだが、今日という日にけじめをつけたかったので

氷帝にいくことにした。



氷帝に着いたころ、門の前で跡部が待っていた。

「遅いぞ」

そう一言いってから越前を待たせている車に勧める。

「跡部さん、少し付き合って欲しいところがあるんだけど」

越前は跡部にそういうとそのまま目的地に車を走らせる。

「で、付き合って欲しいというのはどこだ?」

「・・・跡部さん、俺、気になってる子がいるんだけど・・・」

その言葉に跡部はその先の言葉が容易に想像ついた。

「わかった」

跡部は一言だけ返事をした。

目的地に着くまで、二人は車の中で何も話さず無言だった。



駅前の雑貨屋で目的のものを購入した越前は跡部にお礼をいう。

「今日はありがとうございました、跡部さん」

「いや、俺の方こそ今まで付き合ってもらって悪かったな。もしかして片思いか?」

越前は何も言わずに少し苦笑いをこぼしただけだった。

「ま、俺が言うのも変だが、頑張れよ」

跡部はそういって越前と別れた。





跡部と別れてから数時間後、越前は駅近くの公園にいた。

手には<ファンタ>が握られ、待ち人を待っていた。

しばらくして、越前の待ち人がやってきた。

「ごめん、こんな時間に呼び出して」

越前は手にしていた<ファンタ>をベンチに置くと、

先ほど購入したものを渡した。

「誕生日おめでとう。気にいるかわからないけど・・・俺の気持ち」

越前は軽く笑みをこぼした。

「・・・それだけだから・・・」

越前は照れを隠しながら、その場から立ち去ろうとした。

「ねぇ、また俺と会ってくれる?」


『嫌じゃなかったらだけど・・・。』



越前はそう小さく言った。



二人はそのまま駅まで歩いていった。




おわり